お父さんの大切な役割 ①たくさんの経験から“危険”を学ばせること
危険にあえて近づける
自然に目を向けるという意味で、
夏休みなどに子どもといっしょに
アウトドアを楽しむ親御さんは多いのではないでしょうか。
野外やスポーツ系の活動でこそ、
お父さんに活躍してほしいと思います。
カブトムシを捕りに行くものいいですね。
なかなか捕れないものですが、
だからこそ捕れたときの喜びも大きいもの。
クヌグなどの木に前の晩、蜜を塗っておいて
次の朝早く起きて行くと、カミキリムシや蛾なんかがかかっていて
がっかりなんてこともあります。
それだけならいいけれど、
ときどきスズメバチも飛んできたりして危険なこともあります。
だけど、危険だからといってやらせないのでは意味がありません。
その危険を分からせた上で、
自然界とどううまくつき合っていくかを教えるのは、
たぶんお父さんの役割です。
実のところ、幼稚園や小学校ではいくら良い経験になるとわかっていても
リスクがともなうことをさせるのが、難しい時代になってきています。
たとえばナイフで鉛筆を削ることは手元の感覚を磨くいい訓練になります。
けれども子どもにケガをさせる恐れがあるため、
学校ではなかなかさせられないのです。
であれば、多少危険でも経験したほうが子どものためになることは、
親の責任においてやらせるしかありません。
そして、それらをサポートできるのはお父さんだと思います。
自転車の補助輪を外して乗らせることも、
お父さんが見ているからやってみな、お父さんが守っているよ、
と言ってやらせてみる。
私は、たき火が大好きで、
中学から高校生のころは
駐車場のアルバイトをしながら、秋から冬にかけて、よくたき火をしました。
最近は環境問題もあり、その機会がめっきり減ってしまい残念です。
火を熾す(おこす)という生活の知恵、
あるいは技能は親が子どもに伝えていくべきことだと思います。
ですから幼稚園や障害者施設での活動のなかで火を使うときには
できるだけ子どもたちに手伝いをさせてきました。
たき火をすれば、
だれしも火の温もりを感じる一方で、火の怖さを感じます。
私が小さかったころの思い出ですが、
いつも畑仕事を手伝わされていました。
あるとき隣の畑で草を焼いていたおじさんがいて
その火が線路わきの枯れ草に燃え移ったことがありました。
私はおじさんといっしょになって必死に消しました。
そのとき、火の怖さを大人といっしょに知りました。
人が生きるうえで、畏れ、を知っておくのは
大切なことだと思います。
その意味で、たき火を子どもに経験させるのはいいことです。
もちろん燃える火は、私たちの心を癒してくれますし、
火を扱うことで心が揺さぶられる不思議な感覚も得られます。
機会があれば、ぜひ子どもたちとたき火を楽しんでみてください。
山村 達夫
㈻まこと幼稚園理事長・園長
社会福祉法人藹藹会理事長
福島学院大学福祉心理学部非常勤講師。
大学を卒業後、大学勤務を経て幼稚園の運営に携わる。30歳の時に幼稚園長に就任。35歳の時に社会福祉法人を設立し障害者施設、保育所を設置、現在に至る。教育と福祉を基盤に、実践に裏付けされた臨床的教育研究を行っている。また、障がい者施設・保育園の運営に携わっている。主な著書に、絵本「フィリーがドキドキした夜のこと」(随想舎)、「0歳からのことば育てと子どもの自立」(共著:合同出版)など。
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