お父さんの大切な役割 ②お父さんは、子どもの友だちじゃない!

 

お父さんというのは、昔は恐い存在でした。
ところが、今のお父さんは逆にやさしくなって
まるで友達のような関係になってしまっています。

でも、お父さんは子どもの友だちであってはいけません。

私は、表情、言葉、態度で父親として役割を果たせる父性
家庭のなかには必要だと痛切に思っています。

たとえば子どもがトラブルを起こして
だれかにケガをさせたときに、
「お前が悪い、謝ってこい」
といえる保護者であってほしいと思います。
やられた側になったときも、誠実に謝られたら
「もうこれでいいじゃないか」と矛を収めてほしい。
いろんなことを総合的に考えて妥当な結論を下す、
その潔さみたいなものがほしいと思います。

ところが、最近は謝りに行ってもお父さんが出てきて
裁判にするとかいう話になったりします。
そんなことをしたら周囲の人間関係は
すべて壊れてしまいます。
それが、子どもにとって良いことなのかどうかも考えていないのだと思います。

お母さんが感情的になって騒いだとしても、
お父さんは「これでいいんだ」と家族のなかで
決着をつける役割を担ってほしいと思います。

私は息子が3歳くらいのとき、きつく怒ったことがあります。
あんなに怒ったのはその1回だけ。
だからこそ、その1回が効くのです。
子どもは、お父さんからこっぴどく怒られることで
自分のなかでやっていいことといけないことの線引きが、できるようになります。
これ以上はまずいな、人に迷惑をかけることなんだな
と分かるようになります。

そういうことを教えるという意味で
お父さんは第一の社会の壁にならないといけないのです。

父親から、こんなことは絶対にやっちゃいけないと怒られることで
子どもはそこからはみ出すようなことはしなくなります。
そういう人間としての枠をつくるのが、
父親として大事なことだと思います。

だからお父さんは、子どもの友だちではいけないのです。

父親の役割と書きましたが、
もちろんお父さんがいない家庭では、
お母さんがその役割を担わなくてはなりません。
離婚してシングルマザーになったけれど
おじいちゃんおばあちゃんが近くにいて、
そういう役割を担ってくれるという場合もあるでしょう。

要は、だれがその役割を果たすにしろ、
子育てには厳しさを表す父性が必要だということです。

yamamurasensei

山村 達夫 

㈻まこと幼稚園理事長・園長
社会福祉法人藹藹会理事長
福島学院大学福祉心理学部非常勤講師。

大学を卒業後、大学勤務を経て幼稚園の運営に携わる。30歳の時に幼稚園長に就任。35歳の時に社会福祉法人を設立し障害者施設、保育所を設置、現在に至る。教育と福祉を基盤に、実践に裏付けされた臨床的教育研究を行っている。また、障がい者施設・保育園の運営に携わっている。主な著書に、絵本「フィリーがドキドキした夜のこと」(随想舎)、「0歳からのことば育てと子どもの自立」(共著:合同出版)など。