子どもの夢と親の役目

子どもの夢と親の役目

 

幼稚園や保育園では、
3月に修了式があります。

うちの幼稚園では
修了式の最後に、子どもたちは
自分が大きくなったらこうなりたいという夢を
皆の前で話して退場していきます。

宇宙飛行士になりたい、
アイスクリーム屋さんになりたい、
ケーキ屋さんになりたい、
ヴァイオリンの奏者になりたい、
警察官になりたい。
そんな子どもたちの声を聞いていると
頑張れよーって拍手したくなります。


子どもって
こうありたいとか、
こうなりたいとか、
密かに想っていることがあります。
そういう夢を密かに想えることが大切です。

密かに想うということは
だれかに話して否定されたり
笑われたりするのがイヤなのかもしれません。

つまり
人に話さず自分のなかで想い続けることで
夢を守っているわけです。
そこに意志の強さを感じます。
それだけ強い気持ちで
夢をもち続けているということです。

ただ、その夢を親がすべて
かなえてあげられるかどうかとなると難しいですね。

イチローのお父さんのように、
毎日学校から帰ってくると
バッティングセンターに連れていき
練習をさせたり、
多額の投資をしたりというようなことは、
だれにでもできることではありません。

逆に、
夢をあきらめるときこそが
親の出番ではないかと、私は思っています。
ほんとうにだめだと思った時に、
その夢をあきらめさせるのは
親の仕事ではないかと。

私には双子の息子がいて、
ひとりは野球選手になりたいという夢を
小さいことから持ち続けていました。
高校でも野球部に入りましたが
ある時期から不安定になりました。

レギュラーになれると思って
頑張って頑張って
あんまり頑張りすぎると
心ってもろくなるのですね。

電車で通う30分の間にも、
いろいろと考えるようになります。
なんでおれはだめなんだ、
レギュラーになれないんだと。

そんな息子の様子に気づいたときに、
これはやめさせてやらなければ
と思いました。

もちろん本人は
部活をやめることに抵抗がありました。
先生への遠慮もあったでしょう。
だからこそ、そこは親の出番です。

子どもにとって危機的な状況かどうかは
近くで見ている親が判断してあげなければ
いけない事だと思います。

そして夢をあきらめさせたことには
親が責任を負ってあげなければいけないと思います。

お前はやりたかったんだけど
お父さんがそれをやめさせたんだ、
それでいいんだと。

そうやって親が責任を引き受けることが大切です。
実はそういう重い決断をすることこそ
父親のなすべき仕事ではないかと思っています。

 


yamamurasensei山村 達夫

宇都宮市在住。
まこと幼稚園理事長・園長
社会福祉法人藹藹会理事長
福島学院大学福祉心理学部非常勤講師。

教育と福祉を基盤に、実践に裏付けされた臨床的教育研究を行っている。また、障がい者施設・保育園の運営に携わっている。主な著書に、絵本「フィリーがドキドキした夜のこと」(随想舎)、「0歳からのことば育てと子どもの自立」(共著:合同出版)など。近年はFM栃木“RADIOBERRY”「まことーく!」「今日も“わきあいあい”」、CRT栃木放送「HAPPYLOOPはここから」にも出演。多岐にわたり活躍中。