欲しいものを自分の努力で手に入れる喜びを学ぶ

 

おもちゃが欲しいとか
カードが欲しいとか
子どもはいろいろおねだりしてくるものです。

親は子どもが欲しがるものの
いる・いらないを判断して
必要なものは買ってあげるでしょう。

けれども、毎回簡単に買ってあげたのではもったいない気がします。


お手伝いなり、片付けなり
子ども自身でできることをなにかさせて
その対価として買ってあげるのが
よいのではないでしょうか。

こんな時に参考になるのが
『ペレのあたらしいふく』
(エルサ・ベスコフ作・小野寺百合子訳、福音館書店)
という絵本です。

主人公は小羊を飼うペレという男の子。
ペレは成長するにつれ
着ていた服がどんどん小さくなっていきます。
そこで、ペレは羊の毛を刈りとり
それで糸を紡いでもらい
その糸をよってもらって色を染め
布を織って、仕立て屋さんに服をあつらえてもらい
最後に羊にありがとうとお礼を言う
そんなお話です。

おもしろいのは、
ペレが糸を紡いで欲しいと
おばあちゃんやお母さんにお願いすると
おばあちゃんやお母さんは
やってあげてもいいけれど
お前がお手伝いをしてくれたらね
と交換条件を出すところです。

それに対してペレが真面目に向き合い
ちゃんとお手伝いをすることで
報酬として糸を紡いてもらえます。
その繰り返しでほしかった新しい服を得る
というストーリーになっています。
まじめに働くって素晴らしいことなんだなあ
と思わせてくれる作品です。

子どものこうしたい、こうして欲しいという気持ちを尊重しつつ
それに対して大人が
子どもでもできる仕事を交換条件として課すことで
やりたいことは自分の手で実現できること
自分で努力して手に入れることはとてもうれしいことだということを
教えているのですね。

実際の子育てでも
この「交換方式」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

交換条件には、
子どもがちょっと頑張ればできることを示すのがよいと思います。
たとえば、おつかいに行くとか
食事のあと片付けを手伝うとか。

欲しいものを努力して手に入れる経験は
子どもの成長につながります。
同時に作業させること、
手を使わせる
指を使わせることが
子どもの脳を刺激することにもなります

指は「第二の脳」といわれていますからね。
そういう意味でも
ものを与える交換条件として、
子どもに作業させることは、実に有意義だと思います。

 

yamamurasensei山村 達夫

宇都宮市在住。
まこと幼稚園理事長・園長
社会福祉法人藹藹会理事長
福島学院大学福祉心理学部非常勤講師。

教育と福祉を基盤に、実践に裏付けされた臨床的教育研究を行っている。また、障がい者施設・保育園の運営に携わっている。主な著書に、絵本「フィリーがドキドキした夜のこと」(随想舎)、「0歳からのことば育てと子どもの自立」(共著:合同出版)など。近年はFM栃木“RADIOBERRY”「まことーく!」「今日も“わきあいあい”」、CRT栃木放送「HAPPYLOOPはここから」にも出演。多岐にわたり活躍中。