家庭ごとに築かれる”家庭の文化”って?

 

家族のあり方を考えさせる名作映画があります。
『イン・アメリカ/3つの小さな願いごと』です。
簡単にあらすじを紹介します。

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アイルランドからニューヨークへやってきた
売れない俳優ジョニーと妻サラ
2人の幼い姉妹クリスティとアリエル
ハーレムのボロボロのアパートで
新しい生活を始めた一家は、
貧しいながらも、
ニューヨークで新鮮な毎日を楽しんでいました。

けれどもジョニーとサラは
愛息フランキーの死という悲劇を忘れられず
苦しんでいました。
そんな中、サラが妊娠。
ジョニーは娘たちを学校に通わせるため、
夜勤のタクシー運転手になります。

ハロウィーンの日、
姉妹は同じアパートに住む黒人アーティスト、
マテオと出会い、家族ぐるみで交流するようになります。
マテオはエイズに冒されており
少しずつ衰弱していきます。

 

一方で、サラは未熟児を出産します。
赤ん坊の容体は危険な状態でした。
ところが、アパートのベッドで死の床にあったマテオが亡くなったとき
病院では赤ん坊が急に元気な泣き声をあげました。
この奇跡で家族が希望を手に入れます。

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フランキーを亡くした
その悲しみと罪の意識のようなものを
家族みんなが背負っています。

2人の娘も、
一番下の弟・フランキーへの思いが
子どもたちなりにあるし
両親は息子を死なせたことで
自分を責め続けています。

映画後半、魂となり満月に向かうマテオに対して
「フランキーをよろしく」
と自分の弟の子ともお願いしながら
アリエルがさようならと手を振るシーンがあります。

もちろん実際彼女にはなにも見えていませんが、
想像のなかで、
亡くなった弟に対する悲しみを
いったん下していくという
ほんとうに素晴らしいシーンです。

 

そうやって人間は誰かにお願いすることで
自分の重荷を下していけるのかもしれません。

そういうことも人間が希望に向かっていくうえで
大切なことなのかなと思いました。

 

最後に、
それまでわき役のように描かれてきた
長女のクリスティが
「この家族は私がいたからいままで耐えてこられたのよ」
というようなことを言います。

子どもを亡くした悲しみに
両親が押し潰されそうになったことが何度もあったけれど
そのたびにクリスティは無邪気な子どもを演じて
私たちがいるのだから
お父さんお母さんも頑張ってと訴えてきたということなのでしょう。

家族には色々なことが起こります。
もちろん楽しいことばかりではありません。
つらく厳しいことのほうが
多いくらいかもしれません。

 

けれど、
家族のそれぞれが、その事実に向き合うことで
家族の文化が築かれます。

そしてこれこそが
子ども達が生きていくうえでの、指針のようなものになり
次の世代へと受け継がれていくのだと思います。

 

 

yamamurasensei山村 達夫

宇都宮市在住。
まこと幼稚園理事長・園長
社会福祉法人藹藹会理事長
福島学院大学福祉心理学部非常勤講師。

教育と福祉を基盤に、実践に裏付けされた臨床的教育研究を行っている。また、障がい者施設・保育園の運営に携わっている。主な著書に、絵本「フィリーがドキドキした夜のこと」(随想舎)、「0歳からのことば育てと子どもの自立」(共著:合同出版)など。近年はFM栃木“RADIOBERRY”「まことーく!」「今日も“わきあいあい”」、CRT栃木放送「HAPPYLOOPはここから」にも出演。多岐にわたり活躍中。