子どもに絵本を読むときにやってはいけないこと
子どもにどんな絵本を読ませたらいいですか?
そんな質問をされることがあります。
基本は「子どものために」ではなく
まず親自身が絵本を楽しむことです。
絵本に限らず、なんでもそうです。
自分が楽しめなかったら、
子どもも楽しませてあげることはできません。
だから自分が読んでおもしろかったものを
子どもに読んであげればよいのです。
子どもがあまりおもしろがってくれない
つまらなそうだなというときもあるでしょう。
だけど、自分が読んで、
なにか感じることがあったら
それでいいのではないでしょうか。
親が楽しむ姿が、
やがてその家庭の文化につながっていくのだと思います。
では、子どもと一緒に絵本を読むときは
どんなことに気を付ければよいのでしょう。
私は、親が読み聞かせるというよりは
いっしょに絵本を見て、
いっしょに読めばいいと考えています。
なにも声色を変えて読む必要はありません。
プロが読むときは登場人物になりきって読んだりしますが
親が読むときは、ふだんの言葉遣いで
普通に読んでいくことです。
新聞を読むように読む。
方言丸出しで読む。
読み方よりも、親の声を子どもが聞くことに意味があります。
子どもは親の声を聞きながら
物語の世界を想像し
親は
「この子はいま自分の頭のなかで
言葉を絵にしてきいているんだな」
と想像する。
そうして互いに互いを感じ取れる時間が
親子と絆を育みます。
もう一つ大事なことがあります。
それは親が絵本の中身を
説明しすぎない、ということです。
『オオカミと7匹のこやぎ』というグリム童話があります。
幼稚園で、そのお話の場面を
紙粘土で子ども達に作らせたことがありました。
あるとき、狼をつくっていた子どもが
狼をニコニコ笑っている表情にしたいと言ったそうです。
当然、他の子どもたちは「なんで?」「狼は恐いんだよ」と反発しました。
先生が、どうして狼をニコニコさせたいの?と聞くと
その子はこんな風に答えたそうです。
「だってさ、狼はこれからこやぎが食べられるんだよ。
そんなの嬉しいに決まっているだろ」
その子は幼稚園で先生が読んでくれるのを聞いて初めて
『オオカミと7匹のこやぎ』のお話を知りました。
ところが、家で読んでもらっていた子どもたちは
狼は恐いものだと言います。
親が読み聞かせのときに
そういうイメージを植え付けていたということかもしれませんね。
話を聞きながら
子どもたちがイメージしていくのはいいけれど
親がイメージを植え付けたり
親の価値観を押し付けるのは問題です。
そういう過干渉は
子どもが自我を育てていく営みの妨げになります。
「狼は恐いんだよ」
と親が教えるのではなく
子どもが自分で考えること、感じることが大切です。
このお話はどう思う?
主人公は何を考えてこんなことをしたんだろう?
というような読み方は
小学校に入ってから国語の授業でやればいいことです。
それよりは、
親自身が楽しんでください。
本をいっしょによむことで生まれる
親子のつながりは、その時期にしか得られない
大切な宝物です。
山村 達夫
宇都宮市在住。
まこと幼稚園理事長・園長
社会福祉法人藹藹会理事長
福島学院大学福祉心理学部非常勤講師。
教育と福祉を基盤に、実践に裏付けされた臨床的教育研究を行っている。また、障がい者施設・保育園の運営に携わっている。主な著書に、絵本「フィリーがドキドキした夜のこと」(随想舎)、「0歳からのことば育てと子どもの自立」(共著:合同出版)など。近年はFM栃木“RADIOBERRY”「まことーく!」「今日も“わきあいあい”」、CRT栃木放送「HAPPYLOOPはここから」にも出演。多岐にわたり活躍中。
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